こんにちは、元ケースワーカーのにいやんです。
生活保護を受けている人で「引っ越しがしたい」と考えている人はいませんか?
しかし、「気分転換に引っ越しをしたい」などの理由だと、残念ながら引っ越し代が支給されません。
ですので、当記事では引っ越し代が支給される条件を元ケースワーカーが詳しく説明します。
また、引っ越し代が支給されることが決定しても、制限が多く希望する部屋に住めないこともあります。
例えば、ほんとはあのマンションがいいけど、家賃の金額が高いのでケースワーカーに認めてもらえないときの対処法など、元職員だからこそわかる情報をお伝えします。
この記事の内容
生活保護で引っ越し代が支給される16の条件
生活保護で引っ越し代が支給される条件は16個あります。具体例を交えつつ、説明します。
(1)病気で入院している人が、退院後に住むための住居が無い場合
長期の入院をしていたり、病院で家に帰れる見込みがないと判断されたりするとアパートを引き払います。
しかし、なんらかの理由で退院することになった場合、帰る家がありません。それだと生活ができなくなってしまうので、引っ越し代を支給します。
(2)実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも安いところに転居する場合
あくまでケースワーカーが「転居してください」と指示した場合です。この転居指導は、生活保護開始直後の人に行われることが多いです。現在住んでいる家賃が高すぎるので、家賃が低い住宅に引っ越しをするように指示します。その際は、ケースワーカーの指示で転居するので、当然引っ越し代は福祉事務所が負担します。
ですので、引っ越しをしたいから「今より数千円安い家に引っ越すからお金出してくれ」と言っても転居は認めてもらえません。
(3)国や地方自治体から都市計画のための土地収用を理由に、立ち退きを要求されている場合
国や都道府県から立ち退きを要求された場合、それに従うしかありませんよね。ですので、転居費用は福祉事務所が負担します。
(4)就業していた仕事を辞めたことにより、社宅を転居しなくてはならなくなった場合
家が無くなってしまうので、引っ越し代は支給されます。
(5)社会福祉施設から退所したことにより、帰る家が無い場合
家が無くなってしまうので、引っ越し代は支給されます。
(6)無料定額宿泊所・宿所提供施設を一時的に利用していた人が、居宅に生活できると判断された場合
ホームレスが生活保護を受給しようとする場合、すぐに家が準備てきないので「宿泊所」というところで少しの間、生活をしてもらいます。家でも生活できると判断されると引っ越し代が支給されます。ちなみに、家での生活は無理と判断されて入院になる人もいます。
(7)勤務先の会社に通勤するために著しく時間がかかる場合、会社の近くに転居することが、世帯全体の生活の安定、健康維持の増加、世帯収入の増加、自立助長に特に役立つと認められる場合
就職したけど、いま住んでいる場所からかなり距離が離れている、このような場合は引っ越し代が支給されます。じゃあ、どのくらいの距離が離れていたら引っ越し代が支給されるかというと、それは各福祉事務所の判断になります。
(8)火災等のやむを得ぬ災害により、住居が消滅して住処が無くなってしまったり、住むに堪えないと認められたりした場合
基本的に家が無くなったりしたら引っ越し代は支給されます。
(9)建物の老朽、または破損により居住が出来なくなったと認められた場合
基本的に家が無くなったりしたら引っ越し代は支給されます。
(10)世帯全員の人数から考えて、その住居が著しく狭いと判断された場合
別々の世帯で生活保護を受けていた家族が同居したりして人数が増えることがあります。2人でワンルームの部屋に住むのは少し狭いですよね。
(11)身体障害者がいる世帯で、設備など、居住空間が居住に適さないと判断された場合 または、病気療養上、環境が著しく悪いと判断された場合
車椅子生活なのに段差だらけな家、そのような場合は会議のうえ、引っ越し代が支給されるか判断されます。
また、私がケースワーカーをしていたころ、「病気療養上、環境が著しく悪いと判断された場合」を理由に引っ越し代が支給された例にこんなものがありました。
「隣人の騒音がうるさくてうつ病が悪化してしまいそうだから転居をさせてほしい」とのことでした。ですので、病院に行って医者に診てもらい、結果は「転居が必要」とのことでした。そして、会議にかけた結果、転居費用を支給してあげようということになりました。
(12)住宅を確保できないために、一時的に親戚や知人の元に身を寄せていた場合
お金がないので友達の家に泊まらせてもらっていたけど、限界がきて生活保護を申請した場合ですね。その際の転居費用は生活保護から支給されます。
(13)賃借人が居宅の退去を強く請求してきた場合 または、借家契約の更新の拒絶、解約の申し入れを受け入れたため、やむをえず転居することが必要になった場合
大家さんの都合で、現在の家から出ていかなくてはいけない場合です。本来なら大家さんの都合なので、引っ越し代は大家さんが負担するのですが、契約内容によっては自分で引っ越し代を負担しなければいけないことがあります。その際の引っ越し代は生活保護から引っ越し代が支給されます。
(14)離婚が成立し、新たな住居が必要となった場合
言葉のとおりですね。
(15)高齢者・身体障害者が、扶養義務者の日常的介護を受けるため、扶養義務者の近隣の地区に転居する場合
双方が生活保護受給者であって、扶養義務者が日常的に介護のために高齢者や身体障害者と隣接した近隣の住居に転居が必用な場合
例えば、「地方で生活保護を受けているおばあちゃんがいるけれども、高齢で1人暮らしは厳しいので、東京にいる娘の介護を受けたいから地方から東京に引っ越しをする」。このような場合は、引っ越し代が支給されます。
(16)生活保護受給者の状態により、グループホームや有料老人ホーム等、法定施設に入居する必要があると認められる場合
高齢になり1人暮らしが厳しくなると、施設に入ることになります。その際の引っ越し代は福祉事務所から支給されます。
生活保護の引っ越しの流れ
先ほど説明した16個の条件のうち、1つでも当てはまると判断された場合、引っ越しをすることができます。
では、具体的な引っ越しの流れについて説明していきます。
(1)ケースワーカーに相談する
まずは、ケースワーカーに引っ越しをしたいことを伝えましょう。
当然ですが、なんとなく引っ越しをしたい場合は、引っ越しを認めてもらえないので先ほど紹介した16個の条件の中から理由を探しましょう。
(2)部屋を探す
ケースワーカーからの許可がでたら、お部屋をさがします。家賃の上限額は住む地域によって違いますので、ケースワーカーから指示された金額内の住宅を探すことになります。
(3)必要な書類をケースワーカーに提出する
部屋が決まったら不動産に行きます。そして、費用の見積もり書をもらい、ケースワーカーに提出します。
(4)引っ越し費用が支給される
見積もり書をケースワーカーに提出すると、引越し費用が支給されます。その際、何十万円のお金が支給されるので、それを持ってどこかへ逃げてしまう人がまれにいます。
ですので、ケースワーカーによっては不動産屋に一緒についてくることがあります。
(5)引っ越し業者を決まる
引っ越し業者をきめます。私に自治体では、引っ越し業者は役所で年間契約をしている業者があり、そこを使用していましたので特に探す必要はありませんでした。これは自治体によるみたいですので、ケースワーカーの指示に従いましょう。
よくある質問
Q:16個の条件に該当しないと引っ越しはできないのでしょうか?
⇒自分で費用を負担するなら引っ越しは自由にできます。実際に私がケースワーカーをしていたころに、隣人トラブルに耐えかねて自費で引っ越しをした人が1人だけいました。
Q:引っ越し先は県外や市外でもいいのでしょうか?
⇒場合によりけりです。介護してもらうなどの理由であれば、認められるかと思います。特に理由がなければ認められません。
また、自費ならば可能です。その際は生活保護を違う県で受けることになりますので、あらかじめケースワーカーに伝えてから引っ越しをしましょう。
Q:新築アパートだと引っ越しの許可が出ないのでしょうか?
⇒そんなことはありません。新築であっても家賃が上限以内であれば問題有りません。
Q:上限額を超える家賃の物件には引っ越しできないのでしょうか?
⇒家賃が上限額を超える場合は、許可をしません。
どうしても上限額より高い家賃の家に住みたい場合は、不動産屋にお願いをして、家賃の一部を共益費に回してもらい家賃の金額は上限額まで下げてもらいましょう。ちなみに、共益費は自己負担になります。
(例)
・東京23区で1人暮らしの場合の家賃上限額=53,700円
・家賃55,000円に住みたい
・55,000円のうち、1,300円を共益費にしてもらい、家賃の金額を53,700円にしてもらう
・共益費は生活保護からは支給されないので、1,300円は自己負担になるが引っ越しの許可が出る。
Q:となりの部屋の人が嫌がらせをしてくるのですが、引っ越しをすることはできるのでしょうか?
⇒基本的にはできません。医者に行き、それが原因で病気になってしまったなどの理由があれば引っ越しが認められることがありますが。それもケースバイケースです。それぞれの福祉事務所の判断になります。
まとめ
生活保護を受給中に引っ越しできる条件はなかなか厳しいですよね。
ただし、やむを得ない理由で住む家が無くなってしまった場合は、引っ越し代が支給されるので安心してください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。