生活保護の収入認定とは?基礎控除?【ていねいに説明します】

 

 

こんにちは、元ケースワーカーのにいやんです。

 

生活保護を受けると、「収入認定」とか「基礎控除」という言葉をよく聞くことになるかもしれません。しかし、意味がよくわからないと不安ですよね。

 

そこで、生活保護の「収入認定」と「基礎控除」について、元ケースワーカーが詳しく説明します。

 

当記事を読むことで、「収入認定」と「基礎控除」の意味を理解することができ、働いている人の生活保護費がどのように決まるかわかります。

 

この記事の内容

生活保護の収入認定とは

「収入認定」の意味を詳しく説明するためには、生活保護の制度について少し説明しなければいけませんので、お付き合いください。

 

まず、生活保護を受けると、収入があればケースワーカーに報告することが義務になります。そして、収入がある場合は、国で決めた生活をするうえで最低限必要な金額(基準額)より収入が少ない場合、その差額を生活保護でもらうことができます。

 

ハカセ
文章だけだと難しいじゃろ!具体例で説明するぞ!

 

例1)・就労収入が1万円ある人の場合

※国が決めた最低生活をするのに必要なお金を10万円とします。

※基礎控除は考えないで計算しています。

支給額=10万円-1万円=9万円

手元に残るお金=9万円+1万円(働いて稼いだお金)

=10万円

 

つまり、収入の1万円を差し引いた9万円が生活保護受給者に支給されます。そして、稼いだ1万円も手元に残りますので、自由に使えるお金は10万円です。

 

この1万円が「収入認定額」です。つまり、収入認定とは収入があるから、その分生活保護費の支給を少なくするということです。

 

仕事をしてもしなくても使えるお金が同じなら働かないほうがいいじゃん!

 

 

ハカセ
いやいや、頑張って仕事をした人にはおまけがあって、少し使えるお金増えるような仕組みがあるんじゃよ!

 

正確には、働いた収入のすべてが「収入認定」されるわけではありません。基礎控除というおまけがつきますので、働いた方が働かないより、自由に使えるお金が増えることになります。

 

基礎控除の意味についてはこのあと説明しますので、今は働いたらおまけがもらえて、自由に使えるお金が増えるということを覚えておけば大丈夫です。

 

例2)・親などから1万円もらった場合

※国が決めた最低生活をするのに必要なお金を10万円とします。

支給額=100,000円-10,000円=90,000円

手元に残るお金=90,000円

 

もらったお金は基礎控除の適用がされないので、お金をもらった分だけ生活保護費が少なくなります。

 

つまり、パチンコや宝くじなどで当たったお金は収入認定されますので、その分生活保護費の支給が少なくなります。お年玉なども同様です。

基礎控除とは

 

フクロウさん
基礎控除は、勤労控除とも言うんだよ~

 

繰り返しになりますが、生活保護を受給している人が仕事で収入を得ると、その分保護費の支給が減ります。

 

しかし、仕事で得た収入の場合は、その金額すべてを保護費から減らすのではありません。「基礎控除」という制度があり、頑張って稼いだお金なので少しおまけで差し引かれる金額が少なくなり、結果的に手元に残るお金が多くなります。

 

この基礎控除という制度は、仕事で得た収入に適用されるので、親や親せきからもらったお金に基礎控除は適用されません。つまり、お金をもらった分、保護費の支給額が少なくなります。

 

例3)・就労収入が4万円の場合

※国が決めた最低生活をするのに必要なお金を10万円とします

※就労収入4万円の基礎控除額=17,600円

支給額=100,000円-(40,000円-17,600円)

=77,600円

手元に残るお金=77,600円+40,000円(働いて稼いだお金)

=117,600円

 

仕事をしない場合にもらえるお金は10万円です。しかし、4万円稼いだ場合、自由に使えるお金は117,000円になります。

 

つまり、何もしないより働いた方が、自由に使えるお金が17,000円多くなるのです。

基礎控除の金額一覧(平成30年度)

こちらは基礎控除の表です。どのくらい稼いだら、基礎控除がどれくらいの金額になるのか確かめることができます。

 

データ元:【厚生労働省】平成 30 年度生活保護実施要領等

収入金額 1人目 2人目
~ 15,000 収入額と同額 収入額と同額
~ 15,199 収入額と同額 15,000
~ 18,999 15,200 15,000
~ 22,999 15,600 15,000
~ 26,999  16,000 15,000
~ 30,999 16,400 15,000
~ 34,999 16,800 15,000
~ 38,999 17,200 15,000
~ 42,999 17,600 15,000
~ 46,999 18,000 15,300
~ 50,999 18,400 15,640
~ 54,999 18,800 15,980
~ 58,999 19,200 16,320
~ 62,999 19,600 16,660
~ 66,999 20,000 17,000
~ 70,999 20,400 17,340
~ 74,999 20,800 17,680
~ 78,999 21,200 18,020
~ 82,999 21,600 18,360
~ 86,999 22,000 18,700
~ 90,999 22,400 19,040
~ 94,999 22,800 19,380
~ 98,999 23,200 19,720
~ 102,999 23,600 20,060
~ 106,999 24,000 20,400
~ 110,999  24,400 20,740
~ 114,999 24,800 21,080
~ 118,999 25,200 21,420
~ 122,999 25,600 21,760
~ 126,999 26,000 22,100
~ 130,999 26,400 22,440
~ 134,999 26,800 22,780
~ 138,999 27,200 23,120
~ 142,999 27,600 23,460
~ 146,999 28,000 23,800
~ 150,999 28,400 24,140
~ 154,999 28,800 24,480
~ 158,999  29,200 24,820
~ 162,999 29,600 25,160
~ 166,999 30,000 25,500
~ 170,999 30,400 25,840
~ 174,999 30,800 26,180
~ 178,999 31,200 26,520
~ 182,999 31,600 26,860
~ 186,999 32,000 27,200
~ 190,999 32,400 27,540
~ 194,999 32,800 27,880
~ 198,999 33,200 28,220
~ 202,999 33,600 28,560
~ 206,999 34,000 28,900
~ 210,999 34,400 29,240
~ 214,999 34,800 29,580
~ 218,999 35,200 29,920
~ 222,999 35,600 30,260
~ 226,999 36,000 30,600
~ 230,999 36,400 30,940
231,000 ~ (※) (※)

 

※収入金額が231,000円以上の場合は、収入金額が4,000円増加するごとに、1人目については400円、2人目以降について340円を控除額に加算します。

新規就労控除とは

基礎控除のほかに、新規就労控除というものがあります。

 

新規就労控除とは、新しく仕事を始めた人に対して、6か月の間の控除を行います。

 

平成30年の基準では、新規就労控除の金額は11,200円です。

 

この新規就労控除は、先ほど説明した基礎控除とあわせて行うこともできます。

 

例4)・新しく仕事を始めた場合かつ収入4万円の場合

※国が決めた最低生活をするのに必要なお金を10万円とします

※新規就労控除の金額=11,200円

※就労収入4万円の基礎控除額=17,600円

支給額=100,000円-(40,000円-(11,200円+17,600円))

=88,800円

手元に残るお金=88,800円+40,000円(働いて稼いだお金)

=128,800円

 

働かない場合だと、生活保護で支給される10万円のみなので、働くと自由に使えるお金が増えるのがわかりますよね。

 

ちなみに、基礎控除の金額は就労収入が増えるほど高くなります。

 

つまり、働いて稼げば稼ぐほど、基礎控除が増え、自由に使えるお金が増えるということです。

 

未成年控除とは

未成年控除は、主に高校生のアルバイトの収入認定に使われることが多いですね。

 

基礎控除などに加えて、未成年が働く場合は未成年控除が適用されます。

 

未成年控除の額は、11,400円です。(平成30年度)

 

例5)・高校生でアルバイト収入3万円の場合

・基礎控除は16,400円

・未成年控除は11,400円

収入認定される金額=30,000円-(16,400円+11,400円)=2200円

高校生の手元に残るお金=30,000円-2,200円=27,800円

 

普段の生活保護費に加えて、高校生には27,800円支給されます。30,000円も稼ぐと2,200円足が出てしまうので、少し損をした気分になりますよね。

 

私が計算した結果、27,000円稼ぐと、27,000円まるまる高校生に支給されますので、それが一番お得かなと思います。

 

 

よくある質問【Q&Aコーナー】

Q:生活保護を申請する際の所持金も収入認定され、支給される保護費から所持金分のお金が差し引かれてしまうのでしょうか?

⇒最低生活費の2分の1以下の金額なら保有が認められます。例えば、最低生活費が10万円なら5万円までなら収入認定されません。つまり、保護申請時に多くの所持金があると、少し保護費の支給が少なくなるかもしれないということです。

 

Q:会社で支給される交通費も収入認定されてしまうのでしょうか?

⇒交通費は控除されます。つまり、収入としてみなされません。

まとめ

いかがでしたか?

 

今回は、ややこしい計算があったので少し難しかったですね。しかし、「収入認定」と「基礎控除」は生活保護を受けるならば知っておいた方がいい知識です。

 

ケースワーカーも人間なので計算を間違えて、本来支給される保護費よりも少ない額の保護費を支給してしまうことがあります。そんなとき気がつくことができるのはあなただけです。

 

損をしないためにも、「収入認定」と「基礎控除」について、しっかりと理解をしておきましょう。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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